もう、離れるな 〜地味子×チャラ男の一途すぎる両片思い〜

「どういうことですか?」


俺は食い下がるように、看護師さんの服を掴んだ。


「交通事故に遭った患者さんの多くは、この先一生背負い続けなくてはいけない障害と向き合うことになるわ」

「一生……」

「彼女は、10代。今は長生きできる時代だから、もしかすると100年近く、障害と一緒に生きていくことになるわね」

「100年……」


俺たちはまだ20年も生きていない。

その5倍以上の長い年月を生きることすら、まだ想像すら難しい。

そんな中で、琴莉が立ち向かわないといけない壁の大きさが、
俺にものしかかってくる。



「自分にとって、当たり前だったことができなくなる。周りの人はできるのに、自分だけができない悔しさと申し訳なさ……。彼女は……体の障害と共に、そういう心と向き合い続けなくてはいけないの。一生……」



また、看護師さんは一生という言葉を使った。

きっと、それがどれだけ重いものかを俺に伝えたがっているようだった。

まだ20年も生きていない俺に。



「そして、それは彼女の家族も同じ」

「家族も……」

「そう。もちろん、自立という形で住む場所が離れる家族もいるけど……繋がりは消えない。責任がなんらかの形でつきまとう。それが家族」


責任がつきまとう。

その言葉を聞き、俺は母親を思い出した。


「家族は、逃げられない。この先どんなに過酷なことが起きても。でも、他人は……簡単に逃げられる」


他人。

そう言いながら、看護師さんは俺を見据えた。

俺は、琴莉にとって他人。

この人が案に言いたいことが、言葉にされるよりずっとダイレクトに伝わる。




「一度近づいた後に離れる方が、人を傷つけることは多い。実際彼女はそれで、何度も何度も傷ついた」



この人は、きっと事故後のことを言っているのだろう。

琴莉との繋がりはそこしかないから。

でも何故だろう。

この人が言ってことが、俺と琴莉の歴史につながる。




「お互い、傷つく前に離れることが優しさになることがある」





この人は、実際にそういう人たちを見てきたのだろうか。

だから言うのだろうか。

お前たちも、必ずそうなるから。

その前に離れてしまえ、と。




でも、俺は……。