「音が、違う……?」


俺が聞くと、看護師さんは言った。

詳しいことは、これから検査をして明らかにすると。



「検査をすれば、治る方法が見つかるんですか?」



俺は、琴莉がずっとイヤホンをしていたのを思い出す。

琴莉が、音楽をずっと聞いていたのを思い出す。

だから、あの日常に戻れるなら、戻って欲しかった。

俺は、音を聞いている時の、幸せそうな琴莉の表情も愛おしいと思っていたから。

けれど……。



「耳は、1度悪くなったら二度と戻らない。この先琴莉ちゃんは、補聴器をつけることになると思うわ」

「そんな……」



それから、もう少し話を聞いて、俺はますます苦しくなった。

琴莉は、事故後に知り合った人の声を聞く分には、そこまでパニックにならないらしい。

でも、琴莉の両親や友人……事故の前から知っている人間の声を聴く度にパニックを起こして、こう言うようになったらしい。



「話さないで」

「みんなの声、忘れちゃう」

「どうして変わっちゃうの?」



その結果、琴莉は誰かと話すことすら拒否するようになったとも、看護師さんは言った。



俺は……俺自身は知らなかったとはいえ……俺のせいで琴莉に大きすぎる傷を負わせてしまったことをようやく知った。