こんなこと、馬鹿なことなんだろうか。

今働いているところで、1度だけぼやいてしまったことがあった。


「もう、諦めた方がいいのだろうか、と」


すると、俺の話を聞いてくれていた人がこんなことを言った。

その人は、俺に仕事をくれる人。

琴莉に関する事情も仕方がなく話さざるを得なかったので、大体の流れは知ってくれてはいた。



「お前はさ、どうしたいんだ?」

「俺ですか?」

「彼女が死にそうになった時、お前どう思ったんだよ」

「怖かったです」

「そうだろ?もしお前が行かない間に、彼女死んじゃったら、お前……この先どんな思いするか、考えたこと、あるか?」

「考えたくないです」

「じゃあ考えろ。嫌なことほど、先に考えておけ。その上で、どうすれば少しでも自分が後悔しないかを真剣に考えろ」


嫌なことから逃げるな。

目を背けるな。

真剣に考え続けろ。


この人の元に来てから、俺は何度この人からこれらの言葉を聞いただろう。

そして、考えさせられただろう。



どうして、向き合おうとしなかったのか。

どうして、戦おうとしなかったのか。

どうして……ちゃんと考えようとしなかったのか。

どうして琴莉と俺が、こんなにも離れてしまったのかを。


こんなに、琴莉のことが好きなのに。

側にいたいだけなのに。





だから……考えた。

俺が1番後悔しない方法は何か。

そして、すぐに分かった。

やっぱり俺は、琴莉の1番でいたいんだ。

琴莉が、俺の1番であるように。




例え、琴莉の病室まで入れなくてもいい。

俺の味方が誰もいなくなってもいい。

もし何か琴莉に起きた時に、1番に駆けつけたい。

もう2度と、1人で死なせるようなことはしない。



これが、俺の琴莉の愛し方だと、腹を括った。