琴莉が目覚めた日以降。

俺が何度病院へ行っても、もう誰も中へは入れてくれなくなった。

あれだけ俺の味方だったはずの看護師さんでさえ


「親御さんから言われてますので」


と手のひらを返したように冷たくなった。

それから、俺が琴莉のために渡し続けたお金も、母親を経由して戻ってきた。

母親はその理由を


「もう、あなたは琴莉ちゃんから解放されなさい、ということだと思うの」


と気遣ったように言ってくれたけど、多分違う。

むしろ逆だ。

俺から、琴莉を解放してくれという、最後のメッセージなのだろう。

お金だけの繋がりすらも、拒絶するほど。



琴莉が眠り続けている時は、ほとんど顔も出すことがなかったのに。

目覚めた途端、急に毎日のように琴莉に会いに、琴莉の両親たちは病室に来るようになった。

朝から晩まで。

面会可能な時間、ずっと彼らの内どちらかはいたのだ。


看護師さん達が


「娘さんが目覚めたのが嬉しかったのね」


と話しているのを聞いたが、そうじゃないことは俺には分かった。


あの二人は、なんとしても俺と琴莉を会わせたくない。


はっきりと、その意志を全ての行動から感じ取ることができた。