金髪の人が、私の手を握ったままこう言う。


「何を、しようとしたんだ?」


でも、私にはその質問の意味も分からない。

だから、返事ができない。

金髪の人は、私の手をそっとあるべき場所に戻した。

でも、まだ離そうとしない。


「点滴を外そうとしたよな」

「点……滴?」


この人は何を言っているのだろう。

これは、私を無理やり縛り付けているロープだ。

だって、点滴は誰かを生かすためのものでしょう?

生きるための力を与えてくれるものでしょう?

もしこれが点滴なら、どうして私はこんなに悲しいの?

こうして呼吸をすることが。

目を開けることが。

そして……。


「琴莉っ!?」


金髪の人は、私の手を握りしめた手と反対側の手で、私の頬に触れてきた。


「泣いているのか?」


金髪の人は、そんな風に次々と声をかけてくる。

でも、私の耳はその声を拒絶したがってる。


やめて。

これ以上、声を出さないで。

聞かせないで。

あなたの声を。




「ねえ……ナオくんじゃ、ないよね……?」


お願い。

そうだと言って。

違うと、言って。