私は、まだ歩けない。

手も、ちゃんと使えない。

握ることも難しい。

紙にペンで何かを書こうとすれば、みみずのような絵しか書けない。

日本語って、こんなに書くのが難しいんだということを思い知らされた。

積み上げてきたものが全て、無くなった気がする。


「どうして、こんなものをつけてるんだろう?」


私に繋がれた管は、痛みは与えないけど違和感は与える。

まるで、無理矢理私をこの世に繋ぎ止めているみたいだと思った。

私は、もうこの糸を外したくて仕方がなかった。

だから、手を伸ばした。


私を解放して。


そう願いながら。


そうして、私の手が管を縛り付けているテープに辿り着いた時だった。


「琴莉!?」


私の手を掴む手があった。

暗くてよく見えない。

けれど、機械の光に照らされて、その人が金髪なのは分かった。

私を琴莉と呼ぶ、金髪の人は1人しか知らない。

でもその人のはずはない。

だって……違ったのだ。

私を琴莉と呼ぶ、その声が。

私が知っている、大好きなアイツの声と。