「先輩、そんな風に呼んでましたっけ?」
まだうまく使えない手を、指を動かしながら、私は文字で聞いた。
本当は通話した方が楽だったのかもしれない。
私がいる部屋は個室なので、話し声を出しても良いとはいわれていた。
けれど、今の私には、スマホで通話をするということが辛かった。
声を出すことも。
聞くことも。
話した内容を理解することも。
だから、そのまま文字と、時折スタンプを押すだけの会話に留めた。
そして……。
「実はね、樹と私、先月から付き合い始めたんだよね。樹の方から付き合って欲しいって言われて、初めはタイプじゃないしどうしよっかなーと思ってたんだけどね、樹、今声優事務所の特待生でレッスン受けてて業界の情報入ってくるから、私も一緒にいると勉強になりそうだしって思ったんだ。そんなことより、琴莉ちゃんはどうなの?体大丈夫?事故に遭ったって聞いて、樹と一緒に心配してたんだよ!!連絡くれてよかったよ」
普通に読めば、たぶん3分もかからない内容。
読むだけなら、きっと数秒で理解できるもの。
でもどうしてだろう。
流れてくる文字の意味も、私がどう返事すればいいかも、わからなくてただ混乱した。
結局私は、田村先輩からのラインをそれっきり、既読無視するしかできなかった。
ただ、1個だけ分かったことがある。
私が知っている放送部には。
私が自分の居場所だと信じていた放送部には。
もう戻れない、ということ。
まだうまく使えない手を、指を動かしながら、私は文字で聞いた。
本当は通話した方が楽だったのかもしれない。
私がいる部屋は個室なので、話し声を出しても良いとはいわれていた。
けれど、今の私には、スマホで通話をするということが辛かった。
声を出すことも。
聞くことも。
話した内容を理解することも。
だから、そのまま文字と、時折スタンプを押すだけの会話に留めた。
そして……。
「実はね、樹と私、先月から付き合い始めたんだよね。樹の方から付き合って欲しいって言われて、初めはタイプじゃないしどうしよっかなーと思ってたんだけどね、樹、今声優事務所の特待生でレッスン受けてて業界の情報入ってくるから、私も一緒にいると勉強になりそうだしって思ったんだ。そんなことより、琴莉ちゃんはどうなの?体大丈夫?事故に遭ったって聞いて、樹と一緒に心配してたんだよ!!連絡くれてよかったよ」
普通に読めば、たぶん3分もかからない内容。
読むだけなら、きっと数秒で理解できるもの。
でもどうしてだろう。
流れてくる文字の意味も、私がどう返事すればいいかも、わからなくてただ混乱した。
結局私は、田村先輩からのラインをそれっきり、既読無視するしかできなかった。
ただ、1個だけ分かったことがある。
私が知っている放送部には。
私が自分の居場所だと信じていた放送部には。
もう戻れない、ということ。