それからしばらくの間、私はただただ混乱するしかできなかった。

慣れないベッドの硬さと消毒液の匂いが、私が病院にいるのだということを教えてくれる。

私は、たくさんの人に声をかけられた気がした。

父親に母親。

知らない人達もいた。

誰かが泣き叫ぶ声も聞こえた。

眠っては目覚めて、誰かの顔を見てはまた眠る。

眠っては目覚めて、ただ白い天井を眺めてはまた眠る。

そんなことを私は繰り返していた気がする。

そんな中、少しずつちゃんとした私を取り戻していく中で、私は自分が今までの自分じゃないことに気づき始めていた。

知らない人から話しかけられた時は、なんとも思わなかった。

でも、最初に気づいたのは母親から


「琴莉」


と声をかけられた時。


「……お母さん」


そして自分が返事をした時。


「どうしよう、耳が……変なの……」