今、この人はなんと言った?


「あ……の……?」


聞き間違えじゃないのか?

本当に?


「ほら、早く!琴莉ちゃんに声かけてあげてください!」



そう急かす看護師さんと一緒に、俺はもう1度琴莉の病室へと入った。

風がさっと自分の横を通り過ぎていったことで、俺は窓を閉めることを忘れていたんだなと言うことに気づいた。

けれど、そんなことはどうでもよかった。


「こ……琴莉……?」


ベッドの上には、確かに琴莉の体が横たわっている。

琴莉を生かそうと、たくさんの機械が琴莉にまとわりついている。

それは、さっきと変わらない。

でもたった1つ違うものがあった。

琴莉の小動物のような可愛い目が、ぱっちりと開いていた。

この目をちゃんと見るのは、半年ぶりどころじゃない。

もしかすると数年ぶりかもしれない。

それくらい、俺と琴莉はなかなか目を合わせることができなかった。




「琴莉……おはよう……」



たったそれだけの言葉を話すための声が、震えていた。