「別に俺は女遊びなんてしてない」


俺が反論すると、教師は呆れたようなため息をつきながらこう言った。


「ラブホテルに女生徒たちと行ったことは?」

「それ……は……」

「その表情だと、事実なんだな」



確かに、ラブホテルに入ったことがあるのは、事実だ。

でも、いわゆる体の関係を持つために入ったわけではない。

確か、誰かの実家がそのラブホを経営していて、そこだったら長い時間入り浸ってても問題ないから、という理由で連れて行かれた気がする。

そんなレベルの記憶しかないし、それくらいの理由でしか足を運んだことがなかった。

それを伝えると


「白々しい」


とその教師からは鼻で笑われた。

どうして俺は、この教師から敵意を持たれてるのか、理解に苦しんだ。


「どちらにしても、お前に関する苦情が殺到していることに変わりはない。お前は成績が良いからという理由で、大目に見ろと言う教師もいたが、そうしたらこの騒動だ」


「だからそれは……」



俺のせいじゃない。

俺は被害者だ。

琴莉を手に入れられたかもしれない直前で、奪われたんだ。

でも、それをこの教師に言うのは憚られた。

俺の気持ちを知ってか知らずか、この教師はこの次の言葉で俺を地獄へと突き落とした。



「ちょうど、佐川さんの親御さんからは退学願が出ていたところだ」

「え?」

「なんだお前、幼馴染だと主張する割に、そんなことも知らなかったのか。なるべく早く受理して欲しいと訴えてきたそうだ。お前……あちらの親御さんに相当嫌われたぞ」



目の前が、一気に真っ暗になった。

身体中、凍えるように寒くなった。

でも、背中からは汗が噴き出るような……奇妙な感覚が俺を襲ったのが、まともに残ってるこの日の俺の記憶だった。