「どうして……そんなことをした」

「ムカつくからに決まってるでしょ」

「琴莉が、お前に何したんだ」

「何も。だから嫌いだった。目障りすぎ」


何もしないから嫌いになる……だと?


「何、その顔。信じられないって言いたいの?本当にナオって……周囲のこと全く見えないよね。もっとよく、自分の顔を見てみたら?」


榎本はそう言いながら、自分の手鏡を俺に見せた。

そして、鏡の中には見慣れた自分の顔があった。

琴莉のことばかり考え、眠れなかったことがありありとわかる、隈だらけの情けない自分の顔が。


「ナオの顔はね、国宝なの。みんなの所有物でいないといけないの。みんなナオの目に少しでも入りたくて、必死にバイト代稼いでおしゃれしたりメイクしたりダイエットしてんの。それなのに、あの子は偶然隣の家に生まれたってだけで、ここまでナオが気にかけてる。そんなの許されるはずないと思わない?」


こいつは何を言っているんだ?


「だから、神様があの子に罰を与えたのよ」


意味が分からなかった。

どうして、そんなことで琴莉がそこまで言われないといけないのか。