「何?ナオ。教室で話せないことって」


数日後。

学校に行く気力がなかなか湧かなかった俺だったが、どうしても学校に行かなくてはいけない事態に見舞われた。

その出来事は、今度こそ俺の手で処理してやりたかった。

だから、俺は学校に着いてすぐ、そいつを校舎裏に呼び出した。

人前では話したくない内容だったから。


「聞いてるんだろ?」

「何を」

「琴莉の事故の事だよ!」


俺は、そいつを体育館の壁に追いやり、逃げられないようにした。

そいつは、視線を逸らすこともせず、俺を馬鹿にしたような目で睨み返してくる。


「たかだか交通事故じゃない」


たかだか……だと?


「お前……あいつが今どんな状態にあるのか、知っててそんなこと言えるのか?」

「だって、ちょっと骨折したくらいなんでしょ?」

「は?」

「み〜んな、そう言ってるわよ。佐川琴莉はただの骨折のくせに大袈裟だって」

「ちょっと待てよ」

「何よ」

「みんなって、何だよ」

「み、みんなはみんなよ」

「嘘つくなよ」

「な、何が嘘なのよ」


俺は、そいつの首に手をかけそうになった。

そうしないようにするためには、俺の全部の理性を総動員させなくてはいけなかった。


「お前が、そうやって言いふらしたんだろ。榎本」