暗くて、誰の気配もしない琴莉の部屋を眺めながら、俺はついこの間のことを思い出す。

いつもならこの時間には琴莉の部屋から、色とりどりの音楽が流れてきていた。

俺はそれを聴きながら、琴莉の今を思いながら、明日を夢見る。

そんな日々を繰り返してきた。

それが、パタリと第三者からシャッターが閉まったかのように終わらせられた。

しかも、知らない間に。

俺が、原因の1つとされて。



こんなはずじゃなかった。

こんなことを望んだわけじゃなかった。


「琴莉……」


今までは、音楽にかき消されるような声でしか、ここで呟くことができなかった名前。

でも今は。


「琴莉……琴莉……!!!」


どんなに大きな声で叫んでも、音楽は鳴らないし、電気もつかない。

もちろん、窓も開かない。




「くそ……どうして……」





琴莉を轢いた人間がどうなったかも。

今琴莉がどんな状況なのかも。

誰も教えてくれない。

月が、俺の……不安で潰されていく心臓の色に反比例するかのように、明るく俺を照らしてくる。



ただ、とにかく今は祈るしかない。

琴莉を、死神が連れていかないことを。




もしそんなことになったら。

俺は次何をするか分からない。

俺は、スマホ液晶に表示されている、たった今ラインを送りつけてきた人間の名前を見ながら、そんなことを考えていた。