それから俺と母親は、駅前にある有名チェーン店のファミレスに入った。

2人だけで4人掛けの席に座ることができた。

いつもだったら、俺はハンバーグを、母親はパスタを頼んでいただろう。

でも、何となく入ったものの、ドリンクバー以外を頼む気がしなかった。

それ程までに、俺だけでなく母親も……参っているようだった。



「ねえ、波音」



コーヒーにミルクを入れながら、母親が口を開く。

俺は慣れないブラックアイスコーヒーをちまちまと啜りながら、頷くだけの返事をする。



「琴莉ちゃんの件……なんだけど……」


母親は、マドラーでミルクとコーヒーをひたすらかき混ぜながら、次の言葉を探していた。

もうとっくに、コーヒーの色はすっかり変わっているのに。



何か言われた?



俺は、こう尋ねるべきだったのだろう。

けれど、怖かった。

次母親の口から出てくる言葉が。

手が、震えている。

氷の冷たさによるものだけでは、きっとない。

俺が、半分ほどアイスコーヒーを飲んだところで、母親はようやく声を発した。



「琴莉ちゃん、もしかすると……もう目覚めないかもしれないんですって」