俺が、母親と琴莉がいる病院に着いた頃、まだ太陽は上の方にあった。

結果的に言えば、母親は琴莉の病室前まで行けたけど、俺は行けなかった。

琴莉の両親が、許さなかったから。

だから俺は、母親が戻ってくるのを待った。

いつもならば、暇つぶしにスマホを触るのに、今日は何1つやる気がしなかった。



「……オ……波音!!」


気がつくと、母親が俺の横に立ち、俺の肩を叩いていた。


「どうしたの、さっきから呼んでるのに」


どう説明すればいいのか困り、俺は黙るしか出来なかった。

母親は、俺が返事をする意思がないことを察したのかすぐに


「夕飯、食べましょうか」

とだけ言った。