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「琴莉ちゃん……どうにか一命を取り留めることができたらしいわよ」


母親がそう俺に告げたのは、琴莉が運ばれてから3回夜が通り過ぎてから。

その間、俺は学校に行くことができないまま、ずっと電気をつけない部屋の中で膝を抱えながら怯えていた。

琴莉が、今日にでも死ぬかもしれないと考えるだけで、生きた心地がしなかった。


「うん……」


俺は、ただ声を出すだけでもいっぱいいっぱいだった。


聞きたいことはたくさんあった。



どうにかって、どういうこと?

琴莉は、今どんな状態?

俺は、会いに行ってもいい?



そう、声に出そうとしたが、喉が枯れていたのか、空咳しか出なかった。

ドアの向こうにいるであろう母親は、少しの間俺の回答を待ってくれていたのか、無言を貫いてくれた。

けれど、俺がたった2文字しか反応しなかったことに、痺れを切らしたのだろうか。


「波音」


と、沈黙を破った。

いつもは愛称呼びなのに、硬い声で名前を呼んできた。


「準備しなさい。琴莉ちゃんの病院、一緒に行きましょう」