最初、琴莉は俺の声がけに無視していた。

音楽を聞いているから、聞こえていないのだろう。

そうやって、無理やり言い訳を作ったが、やっぱりキツかった。

ところが、ある時から反応だけしてくれるようになった。

涙を抑えるのがやっとな程、俺は嬉しかった。

早く朝が来るようにと、久々に祈るようになった。


こうして、朝、数秒だけの琴莉とのコミュニケーションができるようになった俺。

でもやっぱり欲望というのはむくむくと湧いてくるもので。



俺が琴莉に近づけないのなら。

琴莉から俺に近づいてほしい。

琴莉に俺を意識して欲しい。

琴莉が、俺と話したくて仕方がなくなって欲しい……。

そうすれば。

もし琴莉から来てくれたらならば。

俺は思いっきり抱きしめてこう言いたい。


「おかえり、琴莉」