どうしてアイツが、そんな顔をするのか……。

私は分からなくて、混乱してしまった。

気がつけば私は、まだ閉じている小学校の門の前で、座り込みながら泣いていた。

アイツは、もう私の前からはとっくに消えていた。

門を開けに来てくれた先生は



「どうした!?具合でも悪いのか?」



と、私を引っ張って保健室に連れて行ってくれた。

それから結局私は、元々前日まで熱で休んでいたので、そのまま早退になった。

親が車で迎えに来てくれたので、アイツの家の前を通る時は、ほんの一瞬だった。

それなのに、さっきのことがすぐに思い出してしまう。

怖かった、アイツの顔。

私は、それを忘れたくて、目を瞑って耳を塞いだ。


「琴莉」

「大丈夫か?」


私を呼んでくれた、アイツの優しい声だけを思い出すようにした。

そうすることで、頭痛が少しずつ治まっていった。

アイツの声が子守唄の代わりになって、私を眠らせてくれた。