きっと他にもメールは来ているかもしれない。

意外と、お昼の放送でかかる音楽を楽しみにしている生徒が多かったから。

だから、俺のメールなんか……下手するとスルーされるかもしれない。

いや、スルーされることの方が普通と考えておくべきなのか?

分からない。

こういうリクエストに自分の希望を送ったことなんて、1度もなかったから。




本当は、何通も送りたかった。

この曲のことは覚えてる?

一緒に歌ったよね。

これも、あれも。

抑えようと必死にならなければ、きっと何十通も送りつけてしまっていただろう。

だけど……それをしてしまったら、琴莉は怖がるかもしれない。

メールの受信をブロックされるかもしれない。

少なくとも、俺は過去そうしてきたから。



ブロックは、相手に意思表示しなくても逃げられる音がない拒絶。

俺は自分の負荷を減らしたいと言う理由だけで、表向きはヘラヘラと適当なことを言って誤魔化しながら、裏では徹底的に遮断すると言うことを繰り返してきた。

それが、うまくやっていくための、俺なりのコツだった。



だけど、もし自分がそれをされていたら?

ふとそんなことに気づいてから、俺は怖くなった。

昼が来るたびに、俺は怯えた。

琴莉は俺の声を聞いてくれただろうか。

何かリアクションしてくれるだろうか。

……リアクション……して欲しい……。

そんなことを、必死で祈った。

だから、俺のリクエストの曲が流れた時、死んでもいいかもしれないと思ってしまうくらい、嬉しかったんだ。