後ろから走ってくる足音が聞こえた。

振り返らなくても、分かった。




「琴莉!待てよ!!」

「何でついてくるの!?」




アイツが、走ってきた。

真っ直ぐ、私の方に。

カバンも持たずに。




「お前が逃げるからだろ!?」




そんな風に叫びながら、怖い顔をしているアイツ。




「意味わかんないよ!!!」




早く小学校についてほしいと考えていた。

信号がこないで欲しいと思った。

捕まりたくないと思った。今、アイツに。

怖いと思ったから。

知らないアイツが、私に近づいてくるのが。




だからだろうか。




「ナオくんなんて大嫌い!!来ないで!!!」





本当はこんなこと思ってないのに。

追いかけてくれるのが、嬉しかったはずなのに。

気がつけば、私はアイツの方を見ずに叫んでいた。

ぴたりと、私を追いかける足音が止んだのに気づいた。

私も、走るのをやめた。

後ろを見てみた。




アイツが、私を怖い顔で私を睨みつけていた。