どういうこと……?
 本殿へつながる回廊を中ほどまで過ぎたところで、ハッとする。誰かいる。
 少女は姿を見せない誰かに向けて、しずかに声をかける。
「誰?」
 風が吹く。
 鼻孔を、濃厚で危険な血の匂いが満たしていく。
 そして、返り血を浴びた武士が、揺らめく篝火に照らされるように現れる。
 年は、少女よりひとまわりは上なのではなかろうか。刀剣は鞘に納められている。炎の色を受けているからか、それともひとを殺してきたからか、顔色は赤く見える。
 一重の涼やかな瞳は、少女を射るように向けられている。
 不思議と、怖くはなかった。ひとを殺すことも厭わない夜盗の一味かもしれないというのに。