誰もいないはずの神社の境内から清い鈴の音色が響く。
――誰? 残党狩りではなさそうだけど。
いまは無人となっている諏訪神社で、巴は夜を過ごしていた。明朝には首実検が行われる。できればその前に、義仲の首を手に入れたいと計画を練っていたところで、この鈴の音が耳に入ってきたのだ。
収斂する鈴の音はまだつづいている。夜闇にぼんやり浮かぶ月のひかりを頼りに、巴は境内へ視線を向ける。
「葵?」
巫女装束の女性が、無表情で巴の前に立っていた。白粉を塗っているからか、顔の部分だけがぼんやり浮かびあがっている感じがする。
いつもの長い髪が、ばっさり断たれている。切ったのだろうか。それよりも。
「身体は大丈夫なの?」
「それどころじゃない」
――誰? 残党狩りではなさそうだけど。
いまは無人となっている諏訪神社で、巴は夜を過ごしていた。明朝には首実検が行われる。できればその前に、義仲の首を手に入れたいと計画を練っていたところで、この鈴の音が耳に入ってきたのだ。
収斂する鈴の音はまだつづいている。夜闇にぼんやり浮かぶ月のひかりを頼りに、巴は境内へ視線を向ける。
「葵?」
巫女装束の女性が、無表情で巴の前に立っていた。白粉を塗っているからか、顔の部分だけがぼんやり浮かびあがっている感じがする。
いつもの長い髪が、ばっさり断たれている。切ったのだろうか。それよりも。
「身体は大丈夫なの?」
「それどころじゃない」