正月二十三日。義仲が準備していたという隠れ家に小子と親忠はいる。二十一日夕刻に義仲は相模の豪族石田次郎為久らによって弓で射られ、馬に突っ伏したところでそのまま首をとられてしまったときく。
 義仲亡きいま、ともにいた乳兄弟の兼平は自刃、兼光は捕虜となったが死罪が確定している。別部隊で動いていた親忠の父、行親は生死不明だ。戦姫と呼ばれた巴も戦場から姿を消した。病床にいた葵までもが戦がはじまると同時に忽然と消えてしまった。みんなばらばらになってしまった。
 親忠だけが小子の元へかえって来た。義仲が討ち死にしたとの悲報を持って。そして小子が自害するのを阻止するために。