* * *

「準備できました」
 親忠が戻ってくる。葵は我に却って顔をあげる。匂款冬の花の香りが鼻孔を刺激する。
「いま行くわ」
 葵は頷き、もう二度と帰ってこない匂款冬の咲く邸から飛び出していく。
 そのまま太刀を抜き、長い髪をひと思いにぶった切って。
 ――いざ、戦場へ。