「……じゃあ、義仲も?」
 小子は顔をあげて、ぽつりと零す。
 木曾次郎源義仲。神に定められた寿命が残り僅かだった小子に惚れ、自分のものにするために諏訪大明神のちからを利用したことで自ら滅びへの道を辿っている男。残酷なまでに一途で純粋な義仲の愛情は、葵からしてみたら狂っているとしか思えない。けれど、小子に対して一生懸命な義仲と、それに精一杯応えようとしている小子を見ていると羨ましいと感じてしまう自分もいる。
「さぁね」
 だから、小子の前で苦笑を浮かべたりする。自分はふたりが結ばれたことを素直に嬉しいと思ってはいる。けれど、不安でもある。
 滅びの道を辿る義仲が、小子との幸せを手に入れるために何をしでかすか……