「捨てたらきっと、おそろしいことになると思って……って、なんで知ってるの?」
 だってわたくしが頼まれて作ってあげたんですもの。とも言えないので小子の疑問には応えず、滔々と葵は呟く。
「たしか、十人くらい死んだんですっけ? あなたがその匂い袋を身につけるようになってから。冬が来るたびに血のつながりを持たない身近な人間ばかりが不審な死を遂げていって……陰陽師の判断は間違っていないと思うけれど、隔離させたところであんまり効果もなかったでしょうね。まぁそのおかげで楽々侵入できたんだけど」
 小子は眼を白黒させる。いま、葵はとんでもないことを口にした気がする。血のつながりのない……そうだ、乳姉妹や女房ばかりが小子の傍で冬になると生命の灯を消していた。
「……うそ」