小子と葵がまともに会話をしたのは一度きり。それでも葵は小子を見抜いていた。半ば強制的に連れられてきたというのに彼女は義仲のことを本気で愛していることを。
小子もまた葵の出自から、自分に憑いたといわれる鬼の正体を知ろうと、ふたりきりになった隙を狙っていたようだ。
「諏訪大明神の巫女姫なんですって?」
単刀直入に小子はきいた。幼いころに自分が出逢った巫女のことを知りたいと。自分は彼女に出逢ったことで運命が定められたのかと。
「残念だけど、そのときわたくしは京都にいなくてよ」
「そのようね。だけどわたしの呪いについてなら、何か知っているんじゃないの?」
「話せることは殆どないけど……まだ持っているの、匂い袋」
小子からは匂款冬の甘い香りがする。女房として藤原邸に仕えていたときからその香りは変わらない。
小子もまた葵の出自から、自分に憑いたといわれる鬼の正体を知ろうと、ふたりきりになった隙を狙っていたようだ。
「諏訪大明神の巫女姫なんですって?」
単刀直入に小子はきいた。幼いころに自分が出逢った巫女のことを知りたいと。自分は彼女に出逢ったことで運命が定められたのかと。
「残念だけど、そのときわたくしは京都にいなくてよ」
「そのようね。だけどわたしの呪いについてなら、何か知っているんじゃないの?」
「話せることは殆どないけど……まだ持っているの、匂い袋」
小子からは匂款冬の甘い香りがする。女房として藤原邸に仕えていたときからその香りは変わらない。