白椿の首が落ちた。
「それでほんとうにいいの?」
 畳の上で横になったままの葵は、悔しそうに歯を食いしばっている男の前で、困惑した表情を見せる。
「このまましずかに滅びの時を迎えるつもり?」
 いまならまだ逃げ出せる。義仲から離れて頼朝方へつくことだって可能なはずだ。
 だが、目の前の男は首を横に振る。
「そんなことをしても、結果は同じです。どうせ裏切ったって相手に利用されて殺されるでしょうから」
「そうね。鎌倉の人間は猜疑心の塊が多いから。義仲だけを討ってはいおしまい、とはいかないでしょうね……それに、彼女を悲しませたくない、ってのもあるわね」
 天井をながめながら、葵はつまらなそうに呟く。もう戦は始まったのだろうか。