鳥籠の中で甘やかされて愛されて。
 いまさらひとりで自由に生き延びろと空に放たれても、生き抜くすべを知らなければ、そこは地獄でしかない。
「連れて行って」
 義仲の耳に聞こえるか聞こえないかぎりぎりの声で、小子は懇願する。
 しんしんと降り積もる雪の中、小子は冷え切った義仲の身体をあたためるように、必死になって抱き返す。
 ……首筋に、生暖かい雫が落ちる。
 義仲は泣いていた。小子の我儘を叶えられなくて、それでも叶えたくて。
 泣いているのを気取られないよう、義仲は気丈に振舞う。
「そんな風におねだりしても、駄目なものは駄目なんだよ」
 優しい声を絞り出して、小子の身体を抱き返しながら。
 彼女だけは助けたい。義仲がそう考えていることを知らずに、小子は涙声になって義仲を求めつづける。
 ひとりにしないで、一緒に逝こうよォ……