出逢って一か月とすこし。正式な結婚の儀式をしたわけでもないのに義仲は小子を正室だと言い張り、傍に置きつづけている。最初のうちは不安だった小子も、巴や忠親たちと知り合い、義仲に無条件に愛されることの居心地の良さから離れられなくなってしまった。これからもずっと義仲と一緒にいられると、頭のどこかで思っていたかった。
 四天王は義仲が小子に溺れているといっていたけれど、小子だって初めて逢ったあの夜から義仲に惹かれていたのだ。
 儚い幻のような幸福の時間は終焉を迎えようとしている。わかっていたから、義仲の言葉が痛かった。
「違う……そうじゃない」
「義仲はわたしが命を落とすことを恐れているのね。わたしはあなたが命を落とす方が怖いわ。自分だけひとり逃げろとか生き残れとかそういうこと言われたら、困る」