「駄目だ」
「どうして? 迷惑だから? それとも」
 唇を尖らせながら、小子は確信を持って言葉を紡ぐ。
「帰ってくることはないから?」
 義仲は小子の耳をぎゅっと抓る。それでも小子は口をとざさない。
「あなたが巴や四天王たちに口封じしているのは知っていたわ。わたしから政治や戦のごたごたを遠ざけることで、あなたが満足していたことも。だけどわたしは不安だったの。わたしは義仲の正室なんだよね? 義仲がわたしを必要だって言ってくれたからわたしはここにいるのよ。もう必要じゃなくなっちゃったの?」