「失礼ね。次の戦について策略でも巡らしていたの?」
「策略などないわ。我が軍の人数は六万余りいたはずがいまや二千人弱。対する坂東軍の数は計りしれん。それでも戦いは避けられぬ……俺ももう終わりだな」
「冗談にしては言っていいことと悪いことがあるわ」
「冗談なものか。俺は無策だ。だというのに彼らは俺に従いまだ戦うつもりでいる。早く見切りをつけて去って行ってくれればよかったものを」
「今さら何を言ってるの。あなたには人望があるのよ。いくら頼朝の方が源家の嫡子として立場が上だからって、そこで諦めるなんておかしいわ。父親の仇を取ろうとは思わないの?」