「駄目だったか」
 さほど残念そうには見えない口調で義仲は呟く。
「正統の天子はこちらにあり、なぜいまさらお前と手を組まねばならぬのかと一蹴されたそうで」
「ま、平家からしちゃ当然のことだな。あわよくば平家軍とともに坂東軍を討てればと思ったが……行親、下がっていいよ」
 行親が姿を消すのを見送り、義仲は溜め息をつく。
 坂東軍が頼朝の弟である範頼と義経を向かわせているとの報告を受け、慌てて考えたのが平家の軍とともに戦うという方法だった。だが、さんざん痛めつけた敵に対して今更ともに手を組んで鎌倉をやっつけようなどといっても断られるのが道理だ。
「義仲?」
 うんうん悩んでいる義仲の背後から、女性の声が響く。
「なんだ巴か」