葵と巫女は同一人物ではないと小子は断言する。けれど葵は変装の達人だ。嘘をついていることだって考えられる。
 そして小子の運命がその日を境に変わってしまったという事実。偶然なのか、それとも必然なのか。巴にはわからないことだらけだ。
「葵にきいても絶対教えてくれないわね」
「……もうきいたけど、のらりくらりとかわされちゃった」
 陰陽師ですら匙を投げた彼女の呪い。それはもしかしたら諏訪大明神の神のちからかもしれない。葵はそう言っていた。だとしたら、なぜ巫女は小子を選んだのだろう。
 小子が考えごとに耽っていると、足元から声が聞こえる。
「いずれ知るときが来るさ」
 義仲はいまの巴とのやりとりを聞いていたようだ。「狸寝入りだったの?」と不貞腐れる巴ににこやかに笑い返すと、両手で小子の頬に触れて優しく告げる。
「諏訪さまは小子を守るために、かのような祝福を施したのだ」
 そう言って、また眠る。