愛などそこにないと豪語する葵だが、義仲からしてみればそのやりとりが葵と自分にとっての愛の形なのかもしれない。絶対殴られそうだからけして口にはしないが。
「ただ、お前の体調が心配だ」
 諏訪大明神の巫女として神術を扱える葵だが、ちからをつかうにはそれ相応の体力が必要になる。いまの葵の状況を考えると寿命を削るのは当然のこと、死んでしまう可能性もある。
「どうせあなたが滅んだらわたくしの存在意義もなくなってしまうわ。それに」
 木曾から上洛する際に連れてこられた巫女姫は、それすら予見していたのかもしれない。
「最期くらい、運命に抗ってみるのも面白そうじゃない?」