外が騒がしい。
「姫様、けしてそこから離れませぬよう」
「わかっているわ。どうせ逃げることすらできない身ですもの」
 女房が妻戸をあけっぱなしにして大慌てで外の様子を見にぱたぱたと足音をたてながら(へや)から姿を消すのを見送り、少女はふぅと溜め息をつく。
 きっと彼女はもうここへは戻ってこないだろう。
 だって自分は多くの生き物を死に至らせる、鬼に憑かれた冬姫だから。
「でも、それでよかったのかも……」
 親しくなっていたら、来る冬に命を落とすのはきっと彼女だっただろうから。