「で、ノコノコひとりでやって来たわけ?」
 女房に案内されて義仲が目にしたのは相変わらず気の強そうな葵が畳の上で横になっている姿だった。
 義仲がひとりで見舞いに来たと知ると、「帰れ」と顔を真っ赤にして俯いてしまった。四天王たちが葵の症状が思わしくないからいちど見舞いに行けと言われたのだと素直に告げると更に怒られてしまった。
 それでも帰るそぶりを見せずにじっとしている義仲に耐えられなくなったのか、葵はしぶしぶ身体を持ち上げ、気だるそうに義仲の前へ座る。
「別に横になっていても構わぬが」
「わたくしが構うの」
 噛みつくように言い返して、葵は義仲を睨みつける。まったくなんでこんな男に仕えなきゃならないんだろうといつものように毒づく姿を見て、義仲は彼女の体調が比較的安定していることを知る。自分がいるときくらいゆっくり気を休めてほしいものだが、この様子ではむしろ火に油を注いでいるといった方が正しいのかもしれないなと義仲は悟る。