いいこと思いついたと嬉しそうに口をひらく親忠を、怪訝そうに他の三人が見つめる。
 ――あーこいつ款冬姫さまに惚れやがったな。
 十七で親忠の父となった行親は息子の考えを咄嗟に見抜き、溜め息をつく。
 けれど鬼に憑かれた姫君を正室に迎えることができたのは義仲しかいないのだ。親忠がひとり反旗を翻したところで彼は容赦なく死の餞別を手向けるだろう。それだけ義仲が小子に向けている愛情は深い。
 血も涙もない鬼神が唯一安らげる場所として選んだのが鬼に憑かれた少女だったことは兼光からすれば意外なことではなかった。だが、自分と血のつながりを持つ兼平はそんな義仲に危惧を抱いている。