匂款冬の姫君。小子をそう呼ぶようになった義仲の四天王たちは、難しい顔をして向き合っている。
「俺は反対だったんだ。藤原北家の姫君を正室に据えるなんて正気の沙汰じゃねーって」
「だけど見てのとおり、義仲さまは款冬姫さまに夢中でいらっしゃる」
「同感。あれじゃあ五条藤原邸の離れに幽閉されていたころと変わらないんじゃないか? 鳥籠を取り替えただけで姫君は外に出られないままなんだし」
姫君はひとりぼっちではなくなったが自由になれたわけではない。義仲は小子が外出することを好ましく思わなかったし、小子もまた、そんな義仲を気遣ってか、自らが外に出ようとするそぶりは見せたことがない。時折、巴が市に連れ出すことはあるが、必要な買い物をするだけで寄り道をしてきたことはないという。
「どっちにしろ、俺たちが何を言っても義仲は姫君を手放しはしないってことだな」
「まったくだ」
「俺は反対だったんだ。藤原北家の姫君を正室に据えるなんて正気の沙汰じゃねーって」
「だけど見てのとおり、義仲さまは款冬姫さまに夢中でいらっしゃる」
「同感。あれじゃあ五条藤原邸の離れに幽閉されていたころと変わらないんじゃないか? 鳥籠を取り替えただけで姫君は外に出られないままなんだし」
姫君はひとりぼっちではなくなったが自由になれたわけではない。義仲は小子が外出することを好ましく思わなかったし、小子もまた、そんな義仲を気遣ってか、自らが外に出ようとするそぶりは見せたことがない。時折、巴が市に連れ出すことはあるが、必要な買い物をするだけで寄り道をしてきたことはないという。
「どっちにしろ、俺たちが何を言っても義仲は姫君を手放しはしないってことだな」
「まったくだ」