「巴みたいに戦えるわけでもないし、葵のように危険な敵地に侵入して間諜になることもできない、だけどわたしだって義仲のために何かしたいの。知りたいの!」
 いま、義仲のまわりで何が起こっているのか。本人に聞いても駄目なら、周りに聞くだけだと小子は円らな瞳を巴に向けて訴える。
「……款冬姫さま」
 巴は目の前の少女を子ども扱いしていたことに気づき、恥ずかしそうにうなだれる。
「教えなさい」
 あえて命令という形で、厳しい表情になった小子は巴へ向き直る。義仲を主人として敬うなら、その正室となった小子も、巴が従うべき主人であるということを思い知らせるために。