「わたしがここにきてもう一月以上経っているの。なのに誰もがわたしを義仲の大事な姫君……恋妻だからと政治や戦の話から遠ざけようとしている。わたしは義仲に必要とされてここにいる。何もしなくていい、知らなくていい、そう言われて素直に頷こうとしたよ。けれどやっぱり無理みたい」
 人形のように見たもの知ったものに対して何も感じることがなければそれはそれで幸せでいられたかもしれない。けれど小子は人間の女性として義仲に惹かれ、それゆえ彼のものになることを決断したのだ。
 あのときの巫女が口にしていた運命の出逢いだと信じて。