あの巫女は、ほんとうに神に仕えた女性だったのだろうか。その後、平家が台頭してきたことで源家側にあった諏訪神社は廃れ、いまでは管理する人間もいなくなってしまったときく。もしかしたら自分が鬼に魅入られてしまったから、父をはじめとした家族や周りの人間を不幸に導いてしまったのかもしれない。
 それでも、ひとり自分を責めても呪われた身は一生続くと陰陽師に定められてしまった。自死することさえ許されなかった小子は、巫女の助言どおり、静かに耐え忍ぶことしかできなかったのだ。
 義仲に出逢うまでは。