社殿の裏から、透き通った声とちりりん、という鈴の音色とともに、巫女装束の少女が現れる。少女、というよりは女性と表現した方がいいくらいの年齢かもしれないが、十に満たない小子にとってみたらどちらにしてもあまり変わらない。
 目の前にいた巫女はおおきくて、威厳があって、妙に偉そうに見えた。
 そしてとても美しかった。化粧をしているのか、色白の肌に桜色の頬に、凛とした一重瞼に夜空を思わせる漆黒の瞳と薔薇の花弁のような口唇が映えている。
「――見つけましたよ。姫様」
「わたしに、何かご用ですか?」
 改まった口調の巫女に尋ねると、彼女は首を左右に振る。その振動でちりりん、ちりちりんと鈴の音もつづく。彼女は左右の腕につけていた鈴の輪を小子に見せながら、妖艶な笑みを浮かべる。