義仲がなんでいるんだと目を白黒させている。はたまた巴も無言になり畳のヘリを無心になって数え始めている。正気なのは忠親だけのようで、「そうそう、彼女だよ」と小子の耳元で教えてくれる。
「山吹が……姫?」
小子の戸惑う声を面白がるように、御簾がはらりと捲られ、馴染みの女性の姿が現れる。小子に仕えていたときと同じ、女房装束だ。傍らにはがっしりとした体躯の武士が控えていて、申し訳なさそうに頭をかいている。
「ここには連れてくるなと言っただろ、兼光」
「も、申し訳ありません。ですが」
「義仲さま。兼光は悪くございませんわ。わたくしが行きたいと駄々をこねただけにすぎませんもの」
「だが……」
たじろぐ義仲を遮るように、巴が心配そうに声をかける。
「山吹が……姫?」
小子の戸惑う声を面白がるように、御簾がはらりと捲られ、馴染みの女性の姿が現れる。小子に仕えていたときと同じ、女房装束だ。傍らにはがっしりとした体躯の武士が控えていて、申し訳なさそうに頭をかいている。
「ここには連れてくるなと言っただろ、兼光」
「も、申し訳ありません。ですが」
「義仲さま。兼光は悪くございませんわ。わたくしが行きたいと駄々をこねただけにすぎませんもの」
「だが……」
たじろぐ義仲を遮るように、巴が心配そうに声をかける。