義仲には四人の側近がいる。彼らは義仲四天王と呼ばれる名高き戦士であり、義仲にとって心許せる大切な仲間でもある。
 今井四郎兼平(いまいしろうかねひら)
 樋口次郎兼光(ひぐちじろうかねみつ)
 根井小弥太行親(ねのいこやたゆきちか)
 楯六郎親忠(たてろくろうちかただ)
 木曾次郎源義仲が、平家討伐に名乗りをあげ挙兵した当時から、彼らはずっと傍にいた。
 兼平と兼光は義仲の乳兄弟であり、巴にとっての兄にあたる。行親は義仲よりも年長で、三十路半ばの豪胆な男だ。そして親忠はその行親の息子で、小子と同じ十七歳の少年だった。
「へぇ~、これが義仲サマが攫ってきたっつう噂のお姫サマですかぁ。さっすが藤原北家の姫君だけあって愛らしい容姿だなぁ」
 じろじろ見られることに慣れていない小子は、遠慮なく話しかけてくる親忠の前で、人形のように口を閉ざしている。