「それは認めるけれど、自分の知らない場所で好き勝手憶測されるのって、気分のいいものではないわ」
 自分が冬姫と呼ばれ、おそれられてしまったのも、最初は一部の囁きだけだったのだ。それが、放っておいたらどんどんおおきくなる炎のように、小子や家族が気づかないうちに拡がって、ついには陰陽師の手に委ねることになった。しかし、救いを求めた陰陽師にまでなすすべはないと言われ、幽閉されることになったのだから、巴に言われて素直に「じゃあ好き勝手言わせておく」とは応えられない。
「それに、義仲だって好き勝手言われているじゃない。巴はどう思うの?」
「別に何も思わないわよ。彼は彼の信念に基づいて動いているだけ。他人にとやかく言われようが己を貫くひとだから、あたしもそれに従っているだけ」