「おい義仲。ほんとうに、法皇軍とやりあうのか?」
「あたりまえだ。法皇の野郎、これほどの大軍を持っていながら兵糧や秣を俺たちに融通しなかったんだぜ。略奪が悪いっていうなら最初から用意すりゃいいんだ。俺らが平家を京都から追っ払ったんだぞ! だというのに俺たちの軍を悪逆非道だ、退治してしまえと法皇の奴らは企てていやがる。完全に喧嘩を売られてるのはこっちだ。なぁ兼平、こりゃ買うっきゃねーだろ?」
 どっちにしろ、法皇がいる法住寺(ほうじゅじ)殿に義仲の乳兄弟である今井兼平(いまいのかねひら)もついてきているのだ。義仲が法皇とやりあうのを諫めはしたものの、怒り心頭の彼を止められるとは思ってはいないのだろう。苦笑を浮かべながらも結局義仲の言葉に頷き、配置につく。