「京のひとびとは冬姫の失踪を神隠しなんて騒いでいるけど、公家連中はそうは思ってないでしょうね。あなたのお父様は平家一門が京を牛耳っているときに残念ながら関白の地位を剥奪されたうえに備前へ流されていたんですもの、復権を狙って息子の師家を傀儡の摂政に仕立て上げることと引き換えに、やり場に困った姫君を押しつけた、なんて言ってるらしいわ」
「わたし、押しつけられた……?」
「何言ってるの。義仲があなたを見初めて連れて来たのは事実なんでしょ、知らない人間に好き勝手言われたって構わないじゃない」
世間から隠されたように生活していた小子にとって、根拠のさだかではない噂話は刺激的だ。
「巴は強いね」
「姫様が世間知らずなだけよ」
「わたし、押しつけられた……?」
「何言ってるの。義仲があなたを見初めて連れて来たのは事実なんでしょ、知らない人間に好き勝手言われたって構わないじゃない」
世間から隠されたように生活していた小子にとって、根拠のさだかではない噂話は刺激的だ。
「巴は強いね」
「姫様が世間知らずなだけよ」