「義仲は?」
「彼なら六条河原で首実検に明け暮れてるはずよ」
「首実検?」
 いきなり物騒な言葉が飛び出してきて、小子は眼をまるくする。
「そ。昨日の夜はね、あなたを連れ去る前に一仕事してきたのよ。法住寺に火を放って法皇軍とやりあってきたの。今上帝と法皇を監禁した朝日将軍こと義仲サマはげんざい京の頂点に君臨している総大将ってわけ」
 楽しそうに話す巴とは裏腹に、小子は顔色を変え、呆気にとられる。
「……法皇軍とやりあって、政権を奪った?」
 それはいったいどういうことだ。
 小子が顔を赤くしたり白くしたり青くしたりしているのを見て、巴はくすくす笑う。