追捕の宣旨を受け、備中水島で平家軍と壮絶な戦をしていた義仲だが、自分が京にいない間にそのような事態に陥っていたとは思いもしなかった。寝耳に水だ。
「あのタヌキめ、なんでもかんでも俺のせいにしやがって! おまけに俺を追討するだと? 何考えてるんだ……」
 慌てて京に戻った義仲は、自分がかなり不利な立場にいることを知り、愕然とする。
 事実、比叡山と三井寺の下衆に対して義仲を討てとの院宣がくだされていた。法皇側も武力行使を厭わないとのことだろう。
 ……もはや法皇にとって俺は邪魔ものでしかないのか?
 義仲は苛立ちを隠すことなく、地団太を踏みながら法皇御所の前へ急ぐ。